【福祉車両の消費税】
福祉車両の課税と非課税のお話になります。
課税とは消費税がかかり、非課税とは消費税がかからない事を言います。
「TaxFree」すなわち「免税」なんて言葉もありますが、福祉車両はその定義が満たされている車両の場合は免税対象となり消費税がかかりません。
では、ここで福祉車両について触れてみましょう。
目次
福祉車両とは
まず福祉車両を簡単に表現すると、車いす利用者をリフトやスロープを使って車に乗り降りする為の装置がついた車や、回転する助手席などの乗降車をサポートする装置がついた車、下肢が不自由な方が手を使って車を運転できる装置がついた車など、お体が不自由な方のための装置がついた特殊な自動車を福祉車両と称しています。
上の画像の「ハイエース・ウェルキャブ」は割とよく見かける「車いす昇降リフト」の福祉車両。
スローパーとも呼ばれる「スロープタイプ」の福祉車両。
助手席やセカンドシートが回転する「回転シート」の福祉車両。
手で運転する装置がついた「自操式手動運転装置」の福祉車両。
これらの画像の福祉車両はほんの一例であり、まだまだ多くの車種そして多くの福祉装置が取り付けられた車両を福祉車両と言います。
福祉車両の定義
まず、○○キャブや○○スローパーと名前がついているものは福祉車両と思っていただいて大丈夫です。
メーカー純正の福祉車両は、カタログやホームページ内のどこかにメーカー毎の福祉車両Nameが入っています。
そして非課税対象と記載されている車種は紛れも無く福祉車両です。
ただ、それだけが定義とは言い切れないのが福祉車両の世界・・・
難しい話ですが、その装置がどんな人のために付いていて、どのように使うのかが明確でなければなりません。
例えば
車いすの方を車に乗せる為のスロープ、電動ウインチ、車いす固定装置、車いすの方用のシートベルトが備わったスロープ車ですと紛れも無く福祉車両です。
では
同じようなワゴン車でスロープが付いた車両です。
車いすとスロープは備わっていますが、車いす固定装置と車いすの方用のシートベルトが付いていません。
これは福祉車両ではありません。
スロープが付いた自動車です。
軽トラックに同じスロープを取り付けました。
間違いなく福祉車両ではありません。
福祉車両とは「その装置がどんな人のために付いていて、どのように使うのか」が大前提です。
なので乗降車をサポートしたり運転補助装置が付いた自動車が、世の中的には福祉車両と呼ばれているのも事実です。
では福祉車両の定義の一つ、課税と非課税に触れてみます。
課税と非課税
下肢や上肢に障がいをお持ちの方が、自らが運転をするために自操式運転装置が取り付けられた自動車は非課税です。
また、車いすに乗られている方を車いすに乗ったまま車内に乗り込み、車内で車いすを固定する装置が備わり、車いすの方用のシートベルトが付いている自動車も非課税となります。
その基準には自操式運転装置、車いす固定装置、車いす固定具などが非課税対象となりますので福祉車両となりますが、回転シート付きの車両や補助ステップが付いた車両に関しては少し難しい部分があります。
確かに体の不自由な方向けの装置かもしれません。
ですが、車いすを必要とされる方向けの装置ではありません。
この装置にプラスして車いすの方用の装置が付いて非課税対象となります。
Aタイプ、Bタイプの種類がある助手席回転シートのお話になります。
車いす用の収納装置が付いている車種ですが、回転シートだけのAタイプは課税、車いす収納装置が付いているBタイプは非課税となります。
単純に収納装置が付いているから非課税ではありません。
実はこのタイプの荷室には車いす用の固定装置が標準で装備されており、明確な使用用途である車いす用収納、固定装置が付いているから非課税となります。
収納装置は画像で見る限りだと車いす用かもしれませんが、耐荷重の範囲内であれば大きな荷物を吊り上げる装置としても使えてしまいます。
明確な車いす用の収納装置と車いす用の固定装置が備わってBタイプは非課税対象となります。
ハンドル操作を片手で行えるようになるステアリング・ノブ。
察しがつくと思いますが課税対象です。
結論を出すと、課税か非課税かは既存の自動車の装備では、どう頑張っても運転できない方用に運転が可能となる手動運転装置が取り付けられた自動車、そして体の不自由な方用にシートが出てきたり車いすに乗ったまま車内に入る事ができて、車いすを収納し、車いすを固定する為の装置が付いた自動車が非課税の対象となり、新車も中古車も問わず非課税対象となります。
また新車時に非課税で販売されていた福祉車両は、中古車としての販売も基本は非課税ですが、新車時から装備されていた手動運転装置や車いす固定具を取り外すなど、上記のような条件を満たしていない場合は課税となります。
後付けで福祉車両に改造
後付け改造の場合も課税、非課税の定義は一緒です。
昇降リフトを後付けしても、スロープを後付けしても明確な理由がない限り課税です。
今までの文面でご理解いただけているかと思いますが、ここでオサライしておきます。
自操式の運転装置が付いていない、明確な車いす用の装置が付いていない自動車は、福祉車両の定義に当てはまらず課税の対象です。
国税庁の法令
国税庁から福祉車両に関する規定が設けられており、一定の条件を満たす事で非課税に該当する内容が告示されています。
【身体障害者用物品に該当する自動車】の項目になりますのでご紹介します。
身体障害者用物品に該当する自動車
[令和6年4月1日現在法令等]
対象税目
消費税
概要
(1) 乗用自動車のうち非課税となるものは、身体障害者の使用に供するものとして特殊な性状、構造または機能を有する次の自動車です。
イ 身体障害者による運転に支障がないよう、道路交通法第91条《免許の条件》の規定により付される運転免許の条件の趣旨に従い、その身体障害者の身体の状態に応じて、手動装置、左足用アクセル、足踏式方向指示器、右駐車ブレーキレバー、足動装置、運転用改造座席の補助手段が講じられている自動車
ロ 車椅子および電動車椅子(以下「車椅子等」といいます。)を使用する者を車椅子等とともに搬送できるよう、車椅子等昇降装置を装備し、かつ、車椅子等の固定等に必要な手段を施した自動車(乗車定員11人以上の普通自動車については、車椅子等を使用する者を専ら搬送するものに限ります。)
(2) (1)に該当する自動車であれば、その譲渡、貸付けおよび製作の請負と、次の修理が非課税とされます。
イ (1)イの補助手段に係る修理
ロ (1)ロの車椅子等昇降装置および必要な手段に係る修理
(注1) 他の者から委託を受けて一般自動車を非課税対象となる自動車に改造する行為は、製作の請負に該当し、非課税となります。
(注2) 改造代金のみならず、改造をした自動車の譲渡代金が非課税となりますが、例えば、いったん一般自動車を購入し、その後改造を行う場合には、当初の一般自動車の購入は課税となり、改造代金についてのみ非課税となります。
(注3) 補助手段の部品や装置自体の譲渡は非課税とはなりません。
法令根拠等
消法6、消法別表2十、消令14の4、消基通6-10-1~4、平成3年厚生省告示第130号
国税庁に問い合わせ
国税に関するご相談は、国税局電話相談センター等で行っています。
国税庁への問い合わせ、身体障害者用物品に該当する自動車のページはこちらから。
非課税ゆえに
福祉車両の定義を知った上で、本来課税となるべき自動車を非課税としてしまうなんて事も・・・
また、福祉装置の移設改造に関しては実は課税対象・・・
本来なら「その装置を必要とされる方の為に取り付けられた特殊な車両」が福祉車両とされて非課税対象となるのですが、残念な事に消費税逃れの為の手段として活用する者も存在します。
これは脱税行為にあたります。
そりゃそ〜ですよね。
本来、支払わなくてはならない消費税を減らす行いをしている訳ですから・・・
消費者には嬉しいお話かも知れませんが、広い意味で違法行為です。
福祉車両を扱うからこそ
福祉車両を知っていて当たり前のことなんですが、何の為に福祉車両事業をしているのかが明確でないと意味がないと思っています。
福祉車両を販売する、福祉車両を整備する、福祉車両を修理する、福祉車両に改造するなど、色々な形で携わる福祉車両。
扱う事なら正直言って誰でも出来ます。
ですが、ただ扱うだけでは福祉車両のお店、そして福祉車両事業とは呼べません。
本当にその装置を必要とされている方に必要な提案ができないと、車を買ったのに装置が使えない、使う人に装置が合っていなくて使えない等、全くもって意味がない状況になってしまいます。
言葉にすると一言で終わってしまう福祉車両。
ですが、その中身には無限に広がる希望や想いが詰まっています。
必要とされている方に必要な提案をさせていただき、必要とされる方の為の福祉車両をつくる。
それが私共の使命であります。
さいたま市の福祉車両助成制度
福祉車両の消費税に関連するページとして埼玉県さいたま市の福祉車両に関わる助成制度はこちら